事例1:バックオフィスの体制整備との合わせ技で効果を上げる
ある情報機器メーカーでは、国内の営業とSE全員に、モバイルワーク、サテライトオフィスの活用を取り入れ、総労働時間を10%削減しながら、顧客との面談時間を1.7倍に増やすことに成功した。当然、提案の質量ともに向上し、売上の伸びも期待できる。
「この成功事例で大事なポイントは、テレワークにプラスして、資料の作成や顧客への事前のヒアリングを担当するバックヤードの専門部隊を設けて、テレワークだけでなくオフィスの仕事のしくみを変えたことです」と富樫氏は語る。
実際に付帯業務にかかる時間は39%削減されている。体制の見直しとの合わせ技で高い効果を上げている好例だと言える。
事例2:管理職にメリットを実感してもうことで広く活用を促す
テレワークを導入したものの、利用者が少なく効果に結びつかないといったこともある。「フルタイムで働けない人のための制度という意識が強く、上司などの目を気にして利用するのを躊躇するケースもある」と富樫氏は指摘する。
こうした目に見えない障害をユニークなやり方で乗り越えた事例がある生命保険会社のケースだ。もともと外交員はタブレットで営業していたが、本社職員はテレワークを導入していなかった。そこで最初に約500名の管理職にPCを貸与し、プレトライアルを開始し、次に全社員に拡大するという段階的なアプローチをとった。
「管理職の仕事は、書類のチェックや承認や決裁、計画策定など。実はテレワークに向いています。まず管理職にテレワークの良さを体感してもらうことで、部下がテレワークを始めることへの抵抗感を拭うのが狙いでした」(富樫氏)。トライアル後のアンケートでは、92%が「働き方をより良い方向に改革できた」と回答している。
事例3:グローバルな時差を超えてワークライフバランスを改善
テレワークのメリットはどこでも、いつでも仕事ができることだ。もちろん、自宅でもオフィス同様に仕事ができるようになる。そのメリットを活かして社員の働き方を変革して、生活の質を向上させることもできる。
ある自動車会社では、オフィスワークをする社員が会社全体で在宅勤務を活用している。社員のほとんどが海外とつながり仕事をしている同社だが、テレワークを活用する人は、制度の導入当初はなかなか増えなかった。
「制度の拡充のほか、社内に在宅勤務の模擬環境を作って問題がないことを実感してもらうなど、さまざまな工夫で利用者を増やしていったそうです」と富樫氏。今では、時差のある海外との会議などにも在宅勤務が活用されている。アンケートでは、社員の7割強が「生活の質が向上した」、また9割が「アウトプットが変わらないか向上した」と回答している。
事例4:職場としての魅力が向上して人材が集まるようになった
テレワークによって、効率化を図るとともに、企業イメージの向上に結びつけたケースもある。中小のガテン系の職場ではテレワークが向かないと思われがちだが、それは先入観に過ぎない。工事などの現場は職場とは離れていることが多く、職場に集まって移動し、現場仕事の後で、職場に戻って工事記録や日報などをつけている。
テレワークを導入すれば、こうした移動にかかる時間を削減できる。ある30名未満の規模の電気設備工事の会社ではモバイルワークと在宅勤務を組み合わせることで、移動の時間を最小限に抑えた。ガソリン代18%、電気代が16%削減され、労働時間も10%減り、無事故によって自動車保険料が減額された。
さらに重要なのが、育児や介護と仕事の両立を実現してワークライフバランスに配慮したことで、職場としての魅力が高まったことだ。募集1名に対して応募が600名も集まったという。