少子高齢化に悩む日本にとって多様な人材を戦力化できる働き方改革は、喫緊の重要テーマだ。その働き方改革を実現する有効な手段として注目されているのが、テレワークである。11月には普及推進運動である「テレワーク月間」も始まる。企業、社会、就業者にとってプラスとなるテレワークをどう成功させるのか。成功事例を交えて考えてみたい。
テレワークはイノベーションを生み出す舞台
日本テレワーク協会のホームページによると、テレワークとは「tele=離れたところで」と「work=働く」をあわせた造語で、「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を指す。
従来、育児や介護などの事情からフルタイムで働けない人のための救済措置と考えられてきたテレワークだが、ここに来て導入の目的が変わって来ているようだ。日本テレワーク協会事務局長の富樫美加氏は「経営戦略として全社員が対象になっているのが、最近の特徴」だと指摘する。
日本の競争相手である先進国の成長の鍵はコスト削減ではなく、“イノベーション”だと言われる。イノベーションを生みだすためには、仕事の生産性を高めて時間的な余裕を作り出し、時間や場所の制約を超えて、社内外の人たちとコラボレーションできなければならない。テレワークはそこに威力を発揮する。今やテレワークは“イノベーションを生みだすための舞台装置”と見なされるようになった。
もちろん、テレワークに向く仕事、向かない仕事というものはある。営業や保守メンテナンスなど社外で仕事をする機会が多い職種ではテレワークの効果は想定しやすい。直行直帰できるようになって移動にかかる時間を短縮でき、次のアポイントまでの空き時間に事務処理を済ませることで、隙間時間を有効活用できる。
逆に個人情報を扱うシステム開発やサポート、社外秘の情報を扱う開発といった、高いセキュリティレベルが求められる業務では、社外で仕事をするという形態自体が馴染まない。富樫氏は「導入部署を制限する企業も多い」と語る。実際にはどんな企業がどんなやり方でテレワークの成果を上げているのだろうか。