ICTの活用とテレワーク導入を同時に進める

 まずICTの活用。これは大きく2つのアプローチがある。一つは社内システムのモバイル対応だ。社内システムへのアクセスが限定されていることで、「持ち帰りの仕事」が増え、営業の機動力を削ぎ、働き方改革の足かせになっている。ネットワーク環境を整備してモバイル対応しておくことで、場所を選ばずシステムが利用できるようになり、営業効率アップに繋がる。もちろん、ここで重要になってくるのがセキュリティ対策である。外出先では、情報漏えいや社内システムへのウィルス感染といったリスクが高まり、手放しでモバイル導入をする訳にはいかない。あくまでも、強固なセキュア環境に基づいたICT活用が必要である。

 もう一つがコミュニケーションツールの導入だ。Web会議システムや情報共有のためのグループウェア、承認決済のためのワークフローなど、上司はもちろん管理部門と相談するためのインフラを強化しておきたい。これまでは高価なシステムを導入する必要があったが、クラウドサービスが充実してきたので、初期費用を抑えて導入できる。

 その上で重要なのがテレワークを導入することだ。営業力強化という面で、テレワークのメリットは計り知れない。営業が外出先で様々な処理ができるようになれば、顧客と向き合う時間が増え、より多くの商談をこなすことができる。

 また、機動力という面でも効果は期待できる。これまで客先で答えることができずに持ち帰っていた案件も、テレワークによって上司や本部とリアルタイムにやりとりすることで、その場で的確な答えを返せるようになる。一つ一つの商談をスピーディに進めることができれば、営業活動全体の効率アップにつながり、会社としての業績向上が期待できる。

場所を選ばずネットワーク環境を利用できるようになれば、顧客と向き合う時間が増える(写真はイメージ)

 こうした営業活動の量的な強化以外にも、企画力と活力の強化にもテレワークは有効だ。テレワークとICTによって、付帯する業務の処理が効率化できれば、企画を考える時間を増やすことができる。それだけイノベーションが生まれる可能性は高まる。企画を考えるためのネタもインターネットで集めやすくなる。

 こうしたICTの活用とテレワークの導入を考える上での大前提は、社内と社外という場所によって、仕事の進め方をわけないこと。言い換えると、社内で仕事を進めるにも、社外と同じように仕事を進めることだ。

 例えば、フリーアドレスを導入して、席を固定させないようにしたり、机の上の書類を片付けてペーパレスにしたり、社内電話ではなくメールやSNSで情報交換をしたり、遠隔地のメンバーとの打ち合わせにWeb会議を利用したりすることだ。これまで定例の打合せで、週1回しか共有できなかった事柄が、日常的に共有できるようになり、今まで以上にコミュニケーションが取れ、時間と場所を有効活用するはずだ。

 こうした下地を作っておくことで、実際のテレワークを導入するためのハードルを下げておこう。社員の顔が見えないと安心できないという先入観も、社内でも社員の顔や姿を見ることなく仕事をしていれば、杞憂に過ぎないことがわかるだろう。 

 もちろん、社員の業績を正確に把握して、公平に評価する制度が前提になることは言うまでもないが、それはテレワークだから必要になると言うものではないはずだ。