約35,000人の従業員を対象に「テレワーク勤務制度」の導入を発表した富士通。働き方改革の必要に迫られながらも、なかなか前に進めることができていない企業が多いなか、富士通ではどのように推進しているのだろうか。

写真は富士通本社事務所

 「富士通はITベンダーでありながらも、コミュニケーションはオフラインのFace to Faceを良しとする、日本の大企業ならではの文化が根強く残っていました。“オンラインのやりとりや電話ではなく、直にみんなで集まってコミュニケーションを取るほうが、得られるものが大きい”と考えられていたのです」と語るのは、富士通株式会社 サービス&システムビジネス推進本部 モバイルビジネス推進統括部 第一ビジネス部 シニアマネージャーの松本 国一氏。

富士通株式会社
サービス&システムビジネス推進本部 モバイルビジネス推進統括部
第一ビジネス部 シニアマネージャー
松本 国一氏

 それが今や、日に6,000ものWeb会議が行われるまでになっているというから、驚きだ。

 「誰しも、いつ出産・育児や介護などによって、働き方を変える必要が出てくるのか、わかりません。労働人口が減少するなかで、ノウハウを持った人材がいなくなることは、会社にとっても大きな打撃になります。そうしたダイバーシティ推進の観点から、ライフステージに合わせて柔軟な働き方ができるように、と舵を切ったところから、富士通のワークスタイル変革は始まりました」(松本氏)

環境を整えながら意識変革を促進

 ワークスタイル変革を支援するソリューションを提供している富士通だからといって、いきなりテレワークを導入したわけではない。まず、グループ企業も含むグローバルの富士通社員16万人に対して、コミュニケーション基盤「Office365」を導入した。先に紹介したWeb会議も、このコミュニケーション基盤を使って実現されている。

 そして次に、外部から安全に情報を扱う環境を整えるために、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)を導入。会社と同じ業務環境をサーバー上で稼働させることで、タブレット端末などを使って社内と同様の業務を行えるようにした。

 コミュニケーション手段を統一し、VDIを導入したことで、物理的なテレワークの環境は整ったと言える。しかし、最もハードルの高い“社内の意識改革”という大仕事が残っていた。

 「Web会議を実際にやってみると、一般的な会議と比べても、さほど差がないのではないかという気付きがあり、徐々に浸透していきました。他にも、相手の在席情報が見られるようになったので、“用事がある人の席まで確認に行って、もしいなければまた戻ってくる”といった無駄足がなくなるなど、小さな変化の積み重ねですね。ツールの使い方や活用事例を社内教育として行うなどしながら、社内の定着化を図っていきました」と松本氏は語る。

ワークスタイル変革によって得られるもの

 富士通が取り組むワークスタイル変革に関しては、社内からの評判も上々だ。Outlookでスケジュールが見える化されたことで、移動の多い松本氏を捕まえるために、移動時間にWeb会議が設定され、Skype for Businessで音声会議に参加したこともあったという。公共交通機関で移動していて、たとえ電話に出られない状況下においても、Web会議であれば話の流れを聞いておき、後で要所をフォローするといった使い方もできる。「あの人がいないから会議ができない。来週以降で再調整しよう」といった時間のロスが削減されたのだ。

常にチャットでやりとりが可能

 同様に、タブレットからワークフローのツールが使えるようになったことで「上長が不在だから、決済が下りるのは来週以降になるだろう」といった事態も防げるようになった。

 さらにチャットが導入されたことで、自席からWeb会議に参加しながら、同時並行で他のタスクも進められるようにもなった。マルチタスクになった結果、会議に集中できないという弊害はありつつも、自分で優先順位を判断して緊急度が高くなければ後で返信することができる。ヘッドセットをつけていれば会議中だと認識されて、周りの同僚が空気を読んで話しかけないようにするといった配慮も、自然に行えているそうだ。

 「こうして場所や時間に縛られることなく、コミュニケーションを活性化できるということが、ワークスタイル変革の最大のメリットです」(松本氏)

部門ごとに異なる意識をまとめる方法とは

 社外で仕事ができるテレワークを導入するのは、セキュリティ的に不安だと考える人もいるだろう。ワークスタイル変革によって、セキュリティポリシーの考え方を転換する必要性も視野に入れておかなければならない。

 セキュリティと一口に言っても、端末や末端機器のセキュリティもあれば、ネットワークやコミュニケーション上のセキュリティもあり、検討すべきポイントは多岐にわたる。

 富士通の例でみると、VDIを活用することで、端末の中にデータは入っておらず、万一紛失したとしても、データを抜き取ることはできない。外部から社内環境にアクセスする際には認証処理をしているため、アクセス権を持たない端末から利用することもできない仕様になっている。

 「セキュリティポリシーを定義する上で最も重要なのは、社員の方々に自らセキュリティを守ってもらおうという発想を持たないことです。意識せずに自然に使っていてもセキュリティは守られている状態にしなければ、面倒を嫌って現場で使われなくなってしまいます」(松本氏)

 ワークスタイル変革を検討する情報システム部門が懸念するポイントは、先に挙げたセキュリティポリシーに加え、自分たちの運用をいかに軽くするか、にあるという。だが、「セキュリティポリシーも運用工数も、現場にとってはまったく関係のない話であり、本質はそこではない」と松本氏は強調する。“セキュリティを変えない”のではなく、“いかに現場の働き方にセキュリティを合わせるか”という思考を持つことが重要なのだ。

 情報システム部門は「安全性や運用工数」、人事部門は「今の人事制度との整合性」、総務部門は「電話機など既存のファシリティと合うかどうか」、現場は「自分たちの効率化」、経営層は「各ツールの必要性や費用対効果」といったように、ワークスタイル変革を推進する上で重視するポイントは大きく異なる。

 そんななかでもワークスタイル変革を着実に進めていくためには、ビジョンの策定が欠かせない。富士通では自社のノウハウや他社を支援してきた実績を生かしながら、ワークスタイル変革に取り組む企業をサポートしている。

FUJITSU Digital Transformation Centerの様子

 

 「FUJITSU Digital Transformation Center」では、ワークスタイル変革を担う人だけではなく、現場の営業、社内制度を作る人事・総務、決裁権を持つ経営者層など、さまざまな部門の方に集まっていただき、富士通とお客さまが一体となって2時間のデジタルワークショップを行い、コンセプトやビジョンの策定をおこなっている。

 何からワークスタイル変革に取り組めばよいか悩んでいる企業も多いはずだ。まずは、FUJITSU Digital Transformation Centerに足を運びビジョン策定に向けたデジタルワークショップを行うところから、始めてみてはいかがだろうか。

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