働き方改革の機運を受け、自社のワークスタイルを見直す企業も多いのではないだろうか。しかし、一口に働き方改革と言っても、企業によって目指すべきゴールは異なる。いざ具体的な施策に落とし込もうとしても、取り組むべき課題の優先付けや実効性の有無の判断に、頭を抱える経営者も多いと聞く。

 そこで本稿ではワークスタイル変革が失敗する3つのケースを例に挙げた上で、成功へ導く2つのポイントを紹介していきたい。

ワークスタイル変革が失敗する3つのケース

<失敗ケース①:ツール先行型>

 オフィスを離れた場所にいても社内と同じ環境で仕事ができるよう、タブレットの導入を決めたとしよう。タブレットはスマートフォンよりも処理能力も視認性も高く、わざわざ操作方法を教える手間も必要ない。一見、実効性がありそうに見えるが、これだけでは失敗する可能性が非常に高い。

 なぜなら、タブレットの導入によって、現場で実際“どのような場面で” “どのような仕事に活用すべきか” “どんな効果が生まれるか”といったことが、まったく検討されていないからだ。

 ツールが持つ機能だけで判断し、ただ闇雲に導入するだけでは、「せっかく投資したのに、なぜか使われずに放置されている」という結果を招きかねない。あるいは、各人でタブレットの使い方やデータの共有ルールが敷かれていなければ、ノートに書かれた手書きのメモと同様、他人がアクセスできないがためにナレッジとして溜まらないどころか、「デバイスが増えたことで今よりもっとデータが分散して、収拾がつかなくなってしまう」事態も大いにあり得る。

 ツールを起点に考えるのではなく、ワークスタイルの実態に合わせてツールを選ぶ、という視点を持つことが重要だ。

<失敗ケース②:制度・風土の不適合型>

 タブレットと並ぶ万能ツールとしてよく話題に上るのが、テレワークだ。うまく活用できれば、移動費・出張費の削減や生産性の向上などの効果が期待できるし、育児や介護で出社が難しい社員の自宅勤務も可能になると、いいことづくめのように思えるが、いきなりテレワークを導入するだけでは、現場の混乱を引き起こすことは言うまでもない。

 テレワークで自宅作業した際の勤怠管理はどうするのか、テレワークで在宅勤務する社員に対して同僚からの理解はあるか、そもそも現場ではテレワーク導入のニーズはあるのか、など検討すべき項目は多分にある。

 現状、適合しないからと言って、テレワークの導入をやめるべきだと言っているのではない。もしテレワークを導入した方が業務稼働率が上がるという見込みがあるのであれば、人事制度や風土を見直して、テレワークを導入すればいい。テレワークによって何が変わり、現状の何をどう変えるべきなのか。導入して混乱を招いた後ではなく、導入前から検討を重ねておくべきだ。

<失敗ケース③:現場不在型>

 例えば、働き方を変えるには人事制度の変更が必要になるだろうということで、人事部門に特命チームを設けた場合を考えてみてほしい。彼らは自らのプロフェッショナルを生かし、人事制度の整備を軸に検討を進めていくはずだ。

 確かに、それも大事なことのひとつだが、それだけで完結するほど、ワークスタイル変革は容易いものではない。

 人事部門だけで机上の空論を重ねた結果、既成概念にとらわれた小さな変化しか生まれなかったり、現場がついていけずに使われない制度だけが増えてしまうといった、本末転倒なことになりかねない。

 同じく、働き方を効率化するにはITの力に頼る必要があるだろうということで、情報システム部門に特命チームを設けた場合はどうだろうか。おそらく新しいデバイスやコミュニケーション基盤の導入を提案し、その優位性を伝えてくれるだろう。

 “本当に活用できれば”働き方は劇的に進化するかもしれないが、本当に活用されるところまで入念に計画されているだろうか。

 ITも人事制度も、ワークスタイル変革を構成するパーツのひとつに過ぎない。あくまでも主役は現場に譲られなければならないのだ。

ワークスタイル変革を成功へ導く2つのポイント

<ポイント①:現場を知る>

 ワークスタイル変革を進めるにあたって、「各部署からメンバーを集めたプロジェクトを立ち上げる」「特命チームを作って一任する」「トップダウンで一気に変える」など、やり方は様々あるが、いずれにせよ重要なのは、ワークスタイル変革を検討する人間が、現場の働き方を熟知することである。

 社員にアンケートを取ったり、時間を取って会議室でヒアリングしたりするくらいでは、ダメだ。自分の働き方についての課題を把握し、しっかりと言語化できている人なんて、めったにいないのだから。

 最も功を奏するのが、OJTのように各部署に入り込み、仕事の進め方を徹底的に観察することである。そうして第三者の目が入ることにより、本人は当然のこととして疑うことなく行っていた日常業務の中から、改善できる点・改善すべき点が浮き彫りになってくるのである。

<ポイント②:ビジョンを共有する>

 先に紹介した3つの失敗ケースに共通するのは、ワークスタイル変革の中心に現場の存在がなかったことに加え、あるべき働き方についてのビジョン共有ができていなかったことが挙げられる。

 ワークスタイル変革をした先に、どんな素晴らしい世界が広がっているのか。会社として“あるべき姿”をどう思い描いているのか。そうした共通認識こそ、ワークスタイル変革に必要なビジョンである。

 人間は変化を嫌う生き物だ。今まで長年、慣れ親しんできたやり方を変えることに対して、抵抗を感じる人は少なくない。

 それでもワークスタイル変革を進めるには、社員一丸となって同じビジョンを持ち、同じ理想を思い描いていることが大切だ。

 さもなければ、社員の意識改革などできるはずもなく、旧態依然とした価値観を持つ“反対勢力”に押し負けて、ワークスタイル変革は頓挫してしまうことになるだろう。

富士通のワークスタイル変革支援

 今回の記事をまとめるにあたり、富士通株式会社 サービス&システムビジネス推進本部 モバイルビジネス推進統括部 第一ビジネス部でシニアマネージャーを務める松本 国一氏に助言を仰いだ。

 富士通では長年培ったワークスタイル変革の知見をもとに、ビジョン策定から施策の浸透まで、統合的に支援する「UXデザインコンサルティングサービス」が用意されている。

ワークスタイル変革を創造する、ビジョン策定の具体的な進め方のイメージ

 ワークショップなどを通じて、お客様と一緒にビジョンを描いていくのが特徴だ。ワークスタイル変革がなかなか進まないとお悩みの方は、ぜひ一度相談されてみてはいかがだろうか。

 

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